おうちグルーミングコラム担当、Lima Lima代表 櫛部ライターによる取材レポート。今回は、ドッグフレンドリーのヨーロッパ・オランダ編です。
2019年4月にオランダのデン・ハーグでシニア犬と暮らす遠藤悦子さんと、黒ラブのマックス、テリアのルーシーに出会い、オランダでのシニア犬との暮らしや犬事情について取材しました。
マックスとルーシー
黒ラブのマックスは12歳の男の子。テリアの女の子ルーシーは10歳。マックスは悦子さんご夫婦がイギリスで暮らしていた頃にブリーダーから、その後ルーシーはシェルターから迎えられました。これまで、夫婦二人暮らしから、犬達という家族が増えたことで、毎日がより楽しく賑やかになっていきました。
その後の転勤で、イギリスからシンガポール、そして現在のオランダへと移り住みましたが、一家は離れる事なく、生活を共に歩んできました。「どの国が良かったですか?」と尋ねたところ、「どの国も素敵で、犬とも暮らしやすかったです」と答えてくれた悦子さん。気候や文化の異なる国々で経験する愛犬との暮らしは不自由さを感じるよりも、犬と共に暮らすことで思い出や楽しみを沢山積み重ねてこられた様子で、マックスとルーシーも落ち着いて穏やかな表情を見せていました。
オランダでの獣医療とケア
近年、マックスはヘルニアを患い、後脚に障害を持つようになり自力での歩行が困難に。散歩や排泄などで介護を要する生活が始まりましたが、マックスの日常生活の質を大きく変えることなく暮らせるようにと日々の散歩も自転車を活用。お気に入りの『池の広場』へ出かけて、のんびり過ごす時間を大切にしているそうです。
アムステルダムには高度医療の動物病院があり、必要な時にマックスを車に乗せて通院したり、犬の鍼灸に通ったり、足腰への負荷の少ないハイドロケアトレーニング(スイミングのリハビリ施設)にも通っているとか。施設の数は限られますが、オランダでも日本と同様に様々なケアの選択肢があるそうです。
犬との暮らしにも自転車を活用 自転車大国オランダ
オランダでは子供や犬、荷物を乗せるために自転車の後ろや前にカートがついたbakfiets(カゴ自転車)が街中を走る姿をよく見かけます。愛犬を自転車に乗せて公園や海岸沿いまで出かけて散歩する愛犬家も多いとか。犬と乗って出かけるためのもの、個人の移動や買い物用のもの、スポーツ用のものと一人で複数台の自転車を所有している人も少なくありません。悦子さんの自転車はマックスとルーシーを乗せるおでかけ専用で、ハンドル前に犬用カートがついたものでした。そのカートの前扉は大きく開けられ、地面との段差をできるだけ減らすように改良されたもので、足が不自由になったマックスの乗り降りにも優しい設計でした。
お気に入りの場所
自宅から自転車で数分走ったところにある『池の広場』は、日当たりも見晴らしも良く悦子さんとマックス、ルーシーのお気に入りの場所。芝生に腰を下ろして、みんなで日向ぼっこしていたこの日、池の側で八重桜が咲いていて、春らしい美しい景色が広がっていました。お気に入りの場所でひとときを過ごした後、悦子さんが「そろそろ帰ろうか」と自転車のカートにマックスとルーシーに乗るように促しましたが、ふたりとも相当お気に入りの場所らしく、一瞬だけ帰宅を躊躇するような仕草を見せた後、「そうですか、帰りましょうかね」と諦めたかのように素直にカートに乗り込み家路へと向かいました。
散歩後は自宅でマッサージ
毎日散歩から帰宅すると、お湯を入れたバケツにティーツリーオイルを数滴垂らしてオリジナルホットタオルをつくり、マックスの身体全体を丁寧にマッサージしながら拭いてあげるそうです。「寒い時は温かいバケツにマックスの足が触れるように湯たんぽ代わりにしてあげるの」と細やかな気配りをしていました。たっぷりと時間をかけてマックスの身体に触れ、日々の体調の変化を感じとることを大切にしており「マックスをケアするとルーシーはあまり近寄ってこなくて…」と、ルーシーが拗ねているんじゃないかと、そんな事も気にかけながら、マックスとルーシーそれぞれの気持ちや体調にはとても細やかに気を使い、どちらにも深い愛情を注いでいるのが印象的でした。
12歳のマックス、10歳のルーシー。それぞれがシニアの時期を迎えはじめた愛犬たちとの生活。「いろいろな選択肢があり、迷うことは多いけれど、今、愛犬のために出来ることや、やってあげたい事について後悔することのない日々を送りたい。」と、最後に温かく語ってくれました。