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・発症年齢の平均は10〜11歳
・早期の避妊手術は乳腺腫瘍の発生率を大きく低下できる
・未避妊の女の子には定期的なスキンシップを
乳腺腫瘍は未避妊の女の子のわんちゃんに最も多く見られる腫瘍であり、体表に触知できるため、飼い主さんも比較的気づきやすい腫瘍です。ごく稀に男の子にも発生することがあります。発症年齢の平均は10〜11歳とされ、若い時期に発症することはほとんどありません。
見つかった腫瘍が良性か悪性か? 一番飼い主さんが心配されることですが、一般的に良悪の比率は1対1とされています。性ホルモンが乳腺腫瘍の発生に大きく関与していることが分かっており、早期の避妊手術は乳腺腫瘍の発生率を大きく低下させます。乳腺腫瘍があることは触診で確認できますが、良悪の判定や進行程度は外観上判定ができるものではないため、気づいた時点で動物病院を受診しましょう。例え悪性であっても完治させることも可能な場合のある病気ですが、早期発見・治療が完治には重要になりますので、未避妊の女の子には定期的なスキンシップを兼ねて胸部から腹部にかけての乳腺を触診することも大切になります。
乳腺腫瘍の病期分類は腫瘍の大きさ、リンパ節の転移の有無、その他の転移の有無により行われます。悪性であれば、乳腺以外の組織に転移する可能性があり、多くが肺に転移します。そのため、診断は腫瘍を一部(正確な判定ができない場合あり)または全て切除し良性・悪性を検査すること、乳腺以外の部位への転移の有無を調べることにより行っていきます。腫瘍を全て切除し検査する場合は診断と治療を兼ねた外科手術となります。
治療は主に腫瘍を完全に取り除くための外科手術が必要になりますが、転移があったり、進行が早く炎症が著しい乳腺腫瘍に関しては外科が不適になる場合もあります。抗がん剤や消炎剤などの内科療法は腫瘍を完全に消失させる治療というよりは、外科手術後の補助的役割、制癌作用、痛みや炎症を緩和し生活の質を上げるために行われることが多いのではないかと思います。良性の乳腺腫瘍でも将来的に悪性に変化する場合がありますので、治療するか様子をみていくかは動物病院でしっかり相談しましょう。
乳腺腫瘍は本当に良く遭遇する腫瘍ですが、飼い主さんやわんちゃんの都合上全てのわんちゃんが上記のように診断・治療が行えるとは限らず、経過観察をしているわんちゃんもいるのも事実です。その場合「大きくならなくて良かったし痛い思いもしなかった」と言える場合、手遅れになり「あの時切除しておけば良かった」と後悔してしまう場合があるのも事実です。悪性腫瘍の場合は様子を見ることを選択した場合は死に直結してしまうことが多いため、定期的な通院やどのような場合に病院に行く必要があるのかをしっかり理解しておくことが重要になります。
監修:福田卓也先生/獣医師
’04年麻布大学獣医学部卒業後、都内動物病院院長を経て、現在、西日暮里ペットクリニック院長。その傍ら、麻布大学専科研修医として腎泌尿器科、一般外科を学ぶ
症状や治療法は一例です。病気を診断するものではありません。自己診断せず、かかりつけの獣医師に相談しましょう。【vol.14(2012年1月)掲載】※情報は掲載当時のものです。