コーギー×柴のナナちゃん17歳
【point】
・食事や健康面などを記録して原因と結果を記録する手帳を作った
・15歳で初めてのことに挑戦しお出かけも積極的に
・老化が受け入れられず事件が発生!
・できることをやり尽くした晩年
編集部がナナちゃんに初めて会ったのは、2008年も終わる頃。撮影場所のドッグカフェに向かってゆっくりゆっくり自分の足で歩いてくるナナちゃん。「かわいいね。」と声をかけるとにっこりスマイル。そんな笑顔が印象的でした。そして約10ヶ月後の2度目の対面でしたが、出迎えてくれたのは、横たわったままのナナちゃんでした。
14歳、活き生き第二の犬生スタート
ナナちゃんは子犬の頃から目立った病気もせず、健康優良犬でした。それでも14歳頃から血液検査で肝臓の数値が少し高めになり、これから何を食べさせ、気をつけなくてはならないか、塚本さんはとても不安になったそうです。そこで、食事や健康面などを記録して原因と結果を知りたいと思い、「記録できるような犬用の手帳を持ちたい」と考え、自ら商品として作ることを決心。それまでは犬関係の仕事に携わったことはなかったため、すすんでペットの催事に参加するようになったそうです。その時に体験した「モデル」。ナナちゃんが思いのほか楽しそうに目を輝かせていたことに感動した塚本さんは、この子の生き甲斐となるのなら…と、「最高齢モデル」を目指しナナちゃんの第二の犬生をスタートさせました。
15歳、活き生き生活を満喫
ナナちゃんはひとりっこだったため、他の犬が苦手。でも犬社会を少しずつ勉強させることで、遅いデビューながらも犬友達が急激に増えました。また、犬関係の仕事の時はちょっとふざけて「専務」と呼ぶことにし、公私の区別をさせたそうです。すると専務モードの時は、どんなに眠くてもシャキっとするプロ意識を持つように!老犬とは言え犬関係の仕事は必ず同行させ、常に楽しい時間を過ごせるようにしていきました。また、何でも興味を持ち、物怖じしない性格だったので、15歳にして初めてのボディーボードに挑戦。他にもドッグヨガ教室、クルージング、ドッグカフェ、ショッピング、ドッグラン、牧場、海などへたくさん連れ出しました。
16歳、ちょっとおとぼけ!? でも幸せ!
16歳も引き続き順調な生活を送っていたナナちゃん。しかし後半は庭の池に落ちたり、トイレの場所を間違えたり、ソファーの裏にハマっていたり…。そして月日を重ねるうちに、左回りにぐるぐると嬉しそうにひたすら歩きまわるように。
老犬を飼ったのは初めてだった塚本さんは、その様子をちょっとお茶目な天然ボケだと思っていたのです。しかしこの頃から認知症を獣医師から指摘されはじめました。処方されたレメディを飲ませていたものの、これから進む認知症という症状が想像できなかったし、この「老化」というものを気持ち的になかなか受け入れられなかったのが現実でした。
症状を受け入れられなかったことで、事件発生
その頃、ナナちゃんに大事件が発生します。なんと、2階のベランダから飛び降りダイブ! 理由は狭いフェンスに頭が挟まり、後ろへ下がれなかったこと。「前にしか進めない」認知症特有の症状を自覚せざるを得なかった瞬間でした。今年の夏に入ってからは、段々頭が下がってきて、歩行が困難に。病院では、前庭疾患の疑いか老化による大脳や神経の異常と言われ、正確な診断をするには全身麻酔をするMRI検査が必要だと告げられます。しかし診断ができたとしても治療法は変わらないと聞き麻酔で体に負担をかけてまで病名を知るよりも、治ることを信じて病気と向き合おうと決心したそうです。まさに17歳を迎える健康優良犬だったナナちゃんの初めての試練が訪れたのでした。
17歳、大変ながらも幸せな時間
徘徊で縦横無尽に歩き回るため、塚本さんは怪我をしないようにナナちゃん専用の部屋を準備。全部の家具を取り外し、足元が滑らないようにタイルカーペットを敷いたり、専用のシャンプー台を作ったり。他にもカメラを色々な角度から4台つけて、携帯電話やパソコンから、確認できるように工夫していきました。
病気を受け入れ、向き合うことが長生きの秘訣
通院はエステ通いのように楽しく!
ナナちゃんに症状が現れる少し前から、塚本さんは新しいものを取り入れはじめます。医療面では、15歳から自己治癒力に頼るホメオパシー療法を取り入れました。また痛みを軽減させるために、鍼治療、レーザー治療、赤外線治療なども定期的に行っていきます。すると、病院ではいつも気持ちよさそうにし、そのまま眠ってしまうこともしばしば。治療が終わると、スッキリとして元気になったように感じられたそうです。また、食事は良質な食材を基本として、他にサプリメント、ハーブ、アロマ、バランスドッグマッサージなどを取り入れました。これまで、塚本さんは一度も老犬介助は大変だとか睡眠不足で辛いと思ったことはありません。ナナちゃんは幸い完全に寝たきりではないので、手作りの歩行器を利用してできるだけお散歩に連れて行き、マッサージや運動をこれからも続けていくつもりだそうです。
取材中は「私にも一言、言わせてよ!」と言わんばかりに何かを一生懸命訴えていたナナちゃん。取材が終わる頃、スヤスヤと眠りはじめたので編集部は、ナナちゃんと握手を交わし「またね」と再会の約束をしました。しかし、残念なことにこの取材のちょうど1週間後、ナナちゃんは天国へと旅立ってしまったのです。ナナちゃんのご冥福をお祈りいたします。
Vol.5(2009年10月号)に掲載。情報はすべて当時のものです。