丸山ワクチンを取り入れたガンの治療

本誌でグルーミングのコラムを執筆していただいているLima Limaの櫛部さんによる体験レポートです。

 

口内炎を疑い受診した動物病院でガン細胞を発見

 2020年2月、11歳になる愛犬マルゴーの歯磨き中に左上顎歯茎に出血を発見しました。当初は歯ブラシの圧が強すぎたかな?と気にしていたのですが、いつも同じ箇所から少量の出血があったため口内炎を疑ってかかりつけの動物病院で受診しました。この時まではまさか自分が愛犬のガンと向き合う生活を始めるとは思いもしませんでした。

 いつもお世話になる近くの動物病院では患部を診察する際、念のためと言いながら出血部分から採取した細胞を顕微鏡で見てくれることになりました。顕微鏡で拡大された画像を見せてもらい、その時にガンらしき細胞が見受けられると告げられたのです。獣医師さんの見解では、扁平上皮癌の可能性があるが、まずは治療方針を明確にするために全身麻酔をかけて必要な部分の細胞を切り取って細胞診を行ってはどうか?との提案がありました。ただ、細胞診で悪性と判断された場合の治療方法について尋ねてみると、外科手術では上顎を削り取るのは生命維持の観点から難しい場合もあり、また、設備の問題から他院で放射線治療を勧める流れとなるとのこと。自宅のある奈良県から放射線治療が受けられる動物病院は大阪府と三重県の2箇所しかありません。愛犬のガン細胞発見にショックを受けつつも、外科的治療は急がず判断したいと考え、その日は細胞診のための予約はせずに一旦帰宅しました。

 

治療方法と愛犬のQOLについて考えてみた

 ガンの治療では外科的なアプローチが一般的ですが、今回の上顎という切除手術が難しい部位は術後の治療やQOLを考えると色々と考えさせられることがありました。「もしも顎切除したら、その後の生活は??」「放射線治療になんども通えるだろうか?」「手術を受けてもその後は緩和ケアになるの?」「治療をすることで愛犬にかかる負担は大きくないだろうか?」などなど…。不安は尽きませんが、今考えられることや私に出来ることを冷静に書き出したことを覚えています。慌てて手術や検査に進んだとしても、さまざまな事情で看病が続かなくなるといったことを避けたい気持ちがあったからです。私はこれまでに2頭の犬を老衰で見送っています。今年12歳を迎えるマルゴーとの生活も折り返し地点を過ぎた頃から、この先の暮らし方についてもしっかり考えておきたいという気持ちもさらに強くなりました。

 

 

ガン治療に研究熱心な動物病院に相談をする

 ひとりで悩んでいても前には進まない(長く悩んでいるヒマもない)と思い、すぐにセカンドオピニオンを求めて、まねき猫ホスピタルの院長である石井万寿美先生に相談することにしました。

 石井先生は、「ぐらんわん!」でもシニア犬の健康についてコラムを連載をされていたこともあり、先生自身のブログでもペットのガン治療や研究について熱心に取り組まれて情報を発信されていることを知っていたからです。石井先生のブログでは、口腔内や鼻腔内の腫瘍やメラノーマのペット達が「丸山ワクチン」を用いた免疫誘導と食事の指導を行って寛解に導く事例も紹介されています。西洋医学に限らず、漢方やアロマ、自然食品などを獣医師の観点から柔軟に取り入れて動物達の病気や不調、体質に合わせた治療を行っておられることにも共感を感じていたからです。

 

その日から始まった丸山ワクチンと食事療法

 まねきねこホスピタルで診察を受け、その日から「丸山ワクチン」の摂取と手作り食の食事療法が始まりました。

 丸山ワクチンにはA,B2種類の濃度の異なるワクチンを処方されます。このワクチンを自宅で2日に1度交互に皮下注射します。愛犬に自宅で皮下注射をするのはドキドキしますが、自宅での注射の方法やコツなどを病院でしっかり指導してもらえました。さらには、自宅で困らないように病院で動画を撮影してくださったので、困った時は手元のスマートフォンでいつでも確認できたことは安心でした。

自宅でワクチンを行なうために病院で指導を受けているところ

 

 食事療法は、丸山ワクチンの免疫誘導が体内でスムースに行えるよう、身体をアルカリ性に傾けるための食材を使った手作り食です。食材の選び方や、量、バランスなどを指導してもらいます。定期的に通院した時には体重を測り、血液検査を受けながら「もう少しさつまいもの量を増やしてみては?」などと結果にあわせて指導を受けました。おかげで当時、一時的に3.0kgまで落ちた体重は3.6kgに戻り、続けるうちにみるみる体調も毛艶も良くなる様子が結果としてあらわれたのです。何よりも驚いたのは、扁平上皮癌と言われた左上顎内にできていた赤い炎症突起は1週間後には消えていたのです。

毎日与えている手作り食(さつまいも、わかさぎ、ニンジン、ブロッコリー、しいたけ、オートミール、キャベツなどアルカリ性の食品)

 

尿のPHを毎日測る(写真は、もう少しアルカリ性に傾ける必要がある色です)

 

ガン細胞の発覚から半年を経て

 目に見える扁平上皮癌らしき炎症突起は目視では消失したものの、今も定期的に血液検査を行っています。血液検査では体内の炎症反応や体内で免疫力が正しく働ける状況かどうかのN/L比率(好中球÷リンパ球)の数値を確認しながら診察を受けています。時には炎症反応がまた高くなることもあります。愛犬の体内の声を聞きながら、今も体調に寄り添う生活を続けています。幸い、マルゴーは毎日美味しいご飯が食べられるので以前より食事の催促は積極的になり、ご機嫌は良いです。

 初診の動物病院でガン細胞に気づいてもらえなければ今はどうなっていたのだろうか?と思うと、初診で診てくださった獣医師さんにもとても感謝しています。いつも愛犬の体調を気にかけてくださっていたので、後日症状の報告と今後の治療方法についてもお話してきました。他院で診察することや、他の治療方法を選ぶことに怒るような先生ではないので、良い獣医師さんたちに恵まれていることに感謝しています。

 ガン治療には外科、放射線、抗がん剤と一般的な治療法があり、それぞれの病状に合わせて担当獣医師さんとの治療方針で進めていくことになります。今回のように免疫誘導といったアプローチがあることを多くの飼い主さんに知っていただく機会になれば幸いです。

 

愛犬に触れる毎日を怠らない

 私自身はトリマーの資格を持っていて、自分の犬達はトリミングをしますが、お客様の犬は基本的にお受けせず、グルーミングレッスンをメインとしています。というのも、愛犬の身体に”触れない”または、 ” 触らせてもらえない”といった理由からプロに頼むという飼い主を一人でも減らしたいという想いがあるからです。毎日身体に触れることで愛犬の不調にだれよりも早く気が付けるのは飼い主だからです。今回は、毎日触れて定期的に歯磨きをして異変に気づいた事も、自宅で愛犬に皮下注射を行える事も11年間毎日愛犬と触れていたことが幸いした事だと感じています。これまでに2頭の愛犬を見送って、お別れの時に「あぁ、もっと触れていたい。抱きしめたい」と泣いたことは忘れられません。ここでは明るく胸を張って言いますが、私は『一生ペットロス状態』です。何の病気もせず老衰で眠るように旅立った愛犬達にこう思うのですから、愛犬に触れることを怠って病気を見逃すようなことがあればもっと悲しみは増すだろうと感じます。愛犬がシニアの年齢になった今、いつもと変わらず毎日触れて愛犬とお互いの温もりを感じて幸せなひとときを少しでも長く過ごしたいと想いは強くなりました。