この記事のポイント
1、1月8日:令和6年能登半島地震動物対策本部が立ち上がる
2、1月15日:県内の動物病院で最長60日間の無料ペット預かりが始まる
3、1月28日:ペット専用移動診療車「ワンにゃん号」で被災地無料相談診療開始
4、2月9日:石川県と環境省が県や民間ボランティアに保護された犬猫情報掲載サイトを立ち上げ
5、3月末以降:無料ペット預かりは対策本部が立ち上げた保護施設へ移行
令和6年元旦の夕方に発生した能登半島地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。今回、令和6年能登半島地震動物対策本部を立ち上げた公益社団法人石川県獣医師会にお話を伺いました。
編集部 :現在、能登半島にどれぐらいの犬猫が被災しているのでしょうか?
対策本部:すべての数を把握することは困難ですが、猫の数の方が多い印象にあります。
編集部 :ペットと同伴避難をできなかった方が多くいると伺っていますが、実際のところはどうでしょうか?
対策本部:やはり実際に連れて行けなかった人が多かったという印象です。
編集部 :今回の地震で、当初、多くの地域で断水や停電等が起こっていましたが、動物病院も多く被災。その混乱の中にあるにも関わらず、1月8日には令和6年能登半島地震動物対策本部が早々に立ち上がりました。さらには、1月15日に飼い主がわかっているペット限定ですが、動物病院内で無料で預かるという活動を始められたと思います。現在、どれぐらいのペットが預けられているのでしょうか?
対策本部:県内61カ所の動物病院で最長60日間ペットを無料で預かっています。2月3日時点で、全体で161匹(猫88、犬58、ウサギ2、鳥13)を預かっていますが、地震から1ヵ月半が経ち、逃げた猫たちが戻って飼い主が見つかるケースがでてきましたので、猫を中心に預かり頭数は増えています。2月18日時点、全体の預かり数は200匹以上になりますし、被災者側からの問い合わせもあります。
編集部 :どんな問い合わせですか?
対策本部:被災者から『もし家の猫が見つかったら預かってくれますか?』というものです。「もちろん見つかったら預かりますよ。見つかったら連絡してください」と、お伝えしております。
編集部 :それは被災者の皆さんにとって希望がとても見えますね。
イオンのペット葬による令和元年度の調査では、石川県の70.2%(全国平均の71.3%)が狂犬病予防接種を行っているというデータがありますが、実際に預かったペットの印象はいかがですか?
対策本部:我々が想像していた以上に、狂犬病接種や避妊去勢はきちんとされていました。能登には動物病院が少ない印象ですが、必要に応じて金沢市の病院まで車で行かれたりする方もいるので、ペットに対する飼育環境や思いは首都圏の飼育方法と比べても遜色ないと思っています。
編集部 :この動物病院での預かり活動はいつまで開催される予定でしょうか。
対策本部:4月から狂犬病予防などが始まるため動物病院の通常業務は忙しくなります。そのため、各動物病院での無料預かりは3月末を目処に終了し、対策本部が立ち上げた保護施設(シェルター)に移行する予定です。
編集部 :その保護施設(シェルター)はどこに設置される予定でしょうか?
対策本部:能登と金沢のちょうど中間に位置する宝達志水町(ほうだつしみずちょう)に建設しているところです。各動物病院での無料預かり期間が60日間経過したペットも含め、3月31日以降はシェルターに移ってもらうことにしています。そこでは獣医師会がフォローしながら、被災者が生活再建のために専念できるようペットを預かっていく意向です。
編集部 :その他にも、被災地無料相談診療を1月28日日曜日より開始されています。その活動に関して教えてください。
対策本部:岩手大学動物病院よりペット専用移動診療車「ワンにゃん号」をお借りし、石川県獣医師会に所属する有志の獣医師によるペットの健康相談を無料で行っています。問診のほか、「ワンにゃん号」に備えられている設備でエコーや血液検査を行うこともできます。必要な場合はかかりつけ医と連携をとり、薬の処方も行っています。
編集部 :それは被災者にとってとてもありがたい活動ですね。取材をする中で、もともと持病を抱えているシニアのワンちゃんたちが薬を処方してもらっていました。現在、対策本部で募っている義援金の使い道は、被災された方の無料診察や新しくできる保護施設の運営に充てられると思います。ところが、義援金を募る上で困っていることがあるそうですね。
対策本部:対策本部は石川県及び金沢市としか連携をしていません。募金を集めることが今回の活動の目的ではありませんので、獣医師会や対策本部と連携を取っているように見せかけて、SNS上で義援金を募る投稿や事実無根の情報拡散に非常に困惑しております。
ただ一部の団体とは、協力関係にありますのでニセ情報ばかりではありません。実際、日本レスキュー協会は、震災後、どの団体よりもいち早く現場に入ってくれ、たくさんの人命やペットを救助してくれました。
編集部 :3・11東日本大震災の時もどうぶつ救援本部が止めているにもかかわらず、たくさんの愛護団体を名乗る人たちが東北入りし活動後に義援金を募るというケースが見られました。さらに自宅にペットだけを避難させ飼い主さんは近隣の避難所で生活しているにもかかわらず、愛護団体が飼い主に無断でペットを捕獲し、県外に連れて行くケースが発生した結果、ペットたちは行方不明になってしまった。今回の能登半島地震でも同じようなケースは発生しているでしょうか。
対策本部:やはり今回も無断で犬猫を連れて行ってしまうケースがあるようです。
編集部 :石川県は2022年度から犬猫の殺処分ゼロを達成していますね。
対策本部:迷子になったから、飼い主が見つからなかったからといって、石川県がペットを殺処分する事はありません。もし迷子のペットを保護してくれている個人の方や団体、飼っている犬猫が迷子になっている方は、各自治体の相談窓口がありますので、そちらにご連絡をお願いします。
環境省と石川県では、迷子のペットと探している飼い主さんのマッチングを行うため、ひとつに集約されているホームページを立ち上げています。民間のボランティア団体が被災ペットを保護している場合は、大切な家族を探している飼い主さんのためにも下記より情報のアップをお願いします。
また、記事をご覧いただいている読者の皆様にお願いです。
被災ペットを保護している団体を見かけましたら、保護ペットの集約ページがあることをぜひお知らせいただき、情報の公開をお願いします。被災者の皆さんの元へ、無事に家族を返還できるよう応援するのも支援になります。
迷子になったペットを探している方がたくさんいます。みなさまのご協力よろしくお願いします。