【群馬県前橋市】に誕生「くっきぃホーム」——人のケアマネが始めたシニア犬・要介護犬専用ホテルとは?

人の介護経験を、犬たちの「第二の人生」に

群馬県前橋市に、ちょっとユニークなドッグホテルがオープンしました。その名も「くっきぃホーム」。対象は、シニア犬や要介護犬です。運営するのは、人間の介護現場でケアマネージャーとして20年以上の経験を積んできた奥沢淳子さん。

「介護って、される本人以上に、家族がとても大変なんです」と話す奥沢さん。犬の介護も同じで、夜鳴きや認知症、寝たきりになったわんちゃんを支える飼い主の負担は相当なもの。
「だからこそ、飼い主さんが“ちょっと休める場所”を作りたかったんです」

築61年の古民家をDIY! 24時間体制でケア

くっきぃホーム」は築61年の民家を自らDIYで改修。必要に応じて一頭ずつケアできるスペースを設け、24時間体制で運営しています。
対象は8歳以上のシニア犬や、年齢に関係なく介護が必要な犬たち。
利用は日帰り(4時間未満)から可能で、「少し預けて休みたい」「泊まりで介護をお願いしたい」など、さまざまなニーズに対応しています。

実際、認知症による夜鳴きや徘徊などで疲弊していた飼い主さんが、数日間預けたことで「久しぶりにゆっくり眠れた」と感謝の言葉を寄せたことも。

医療ではなく「介護」を支える場所として

「うちでは医療行為はできません。たとえばインスリン注射が必要な子は、飼い主さんと連携して日帰り対応で預かったこともあります」と語る奥沢さん。

犬の“介護施設”が少ないなかで、「医療とは異なる視点で、生活支援としてのケア」を担うこの場所は、これからの高齢犬との暮らし方にヒントを与えてくれます。

「しっぽの家族」——高齢者と犬猫をつなぐ新しい取り組み

さらに奥沢さんは、ケアマネージャー仲間や元福祉職のメンバーとともに、NPO法人「しっぽの家族」を立ち上げました。

目的は、高齢者が飼っていた犬猫が、入院や施設入所で飼えなくなってしまう状況を減らすこと。同法人では、健康な高齢者に譲渡する際、月1回の訪問モニタリングを実施。犬猫の状態だけでなく、飼い主本人の健康や生活状況も確認します。

「何かあればすぐに地域包括支援センターにつなげるのが、私たちケアマネの得意分野なんです」

飼育放棄の防止、多頭飼育崩壊の回避へ

奥沢さん自身も、ケアマネの立場で犬猫の引き取りを頼まれ、これまでに猫3匹・犬1匹を自宅で飼育してきました。
「このままでは、ペット好きのケアマネが多頭飼育崩壊になってしまう」という危機感が、法人設立の背景にあります。

命をつなぐ「介護と福祉」の新しいかたち

くっきぃホームも、NPOしっぽの家族も、まだ始まったばかりの活動ですが、人間とペット、両方のQOL(生活の質)を高めるモデルとして、全国に広がる可能性を秘めています。

介護と動物福祉が交わるこの小さな場所から、命のバトンがつながっていく――
奥沢さんの挑戦は、今まさに、未来の福祉のあり方を問いかけています。

施設名: くっきぃホーム(https://kukkihome.com
所在地: 群馬県前橋市岩神町2-1-11
対象: シニア犬(8歳以上)・介護が必要な犬
運営: 奥沢淳子(元・人間介護ケアマネージャー)
併設法人: NPO法人しっぽの家族(https://www.instagram.com/sipponokazoku/