斜頸(前庭疾患)

神経系の病気の症状である斜頸とは頭部が斜めに傾くことなのですが、症状が軽ければ首をかしげているだけのように見えることもありますし、重度で急性であれば体の平衡がとれなくなり転んでバタバタし、発作を起こしているように見えることもあります。

よくある症状

①頭部が斜めに傾いている
②黒目が往復運動している

このような場合、多くのわんちゃんが吐いたり、異常な眼振を伴ったりします。眼振とは無意識に起こる眼球の往復運動のことをいいます。通常顔を動かしたり体を動かすことによっても眼振は起こりますが、顔を静止しているにもかかわらず目が往復運動しているような異常な眼振が斜頸に伴うことが多くあります。視界が常に揺れているということは すごく揺れる船に乗っているのを想像してもらえれば分かると思いますが、かなり吐き気を伴い気分が悪くなります。体の傾きを感知しているのは耳の近くにある前庭と言われる器官で左右に存在します。ここに障害や圧迫が起こると体の平衡感覚が取れなくなくなり、首が傾いてしまったり、異常な眼振が生じてきます。

前庭に障害が加わる原因としては中耳炎や内耳炎、腫瘍、甲状腺機能低下症などがあり、原因不明で急に症状が発症することもあります。この原因の中で耳は自宅でも確認できるため、斜頸の症状がみられた場合はわんちゃんの耳をチェックしてみるといいかもしれません。しかし汚れていても 急に洗わずに病院で洗ってもらってください。耳が原因で斜頸している場合鼓膜が破れていることがあるため、洗浄液などを耳にいれると奥にまで液が入ってしまい、さらに症状が悪化してしまうためです。耳に原因が無いようであれば血液検査や頭部のMRI検査で原因をさらに追究することになります。

原因が分かり治療ができれば症状は徐々に改善していきますが、後遺症として斜頸が残ってしまうことがあります。日々進行している斜頸でなければ、斜頸が少し残っていてもその状態に体が適応していきますので、日常生活を送ることには支障がなくなることでしょう。

体をさすったりしない
(かえって刺激の元に)
床に頭を打っていたら、クッションなどを挟んであげる
発作を記録する

本文監修:福田卓也先生/獣医師
’04年麻布大学獣医学部卒業後、都内動物病院院長を経て、現在、西日暮里ペットクリニック院長。その傍ら、麻布大学専科研修医として腎泌尿器科、一般外科を学ぶ

症状や治療法は一例です。病気を診断するものではありません。自己診断せず、かかりつけの獣医師に相談しましょう。※情報は掲載当時のものです。