ぐらんわん！ 
小さなカフェmeetぐらんわん！に集まる愛犬物語 第２わんは、元野犬なつめちゃんの物語です。
殺処分を免れた元野犬がカフェ通い!? 〜奇跡の生還から短い犬生を終えるまで〜
その子は、黒くてちょっと足が短めなところがとてもキュートで
元野犬だとは思えないくらい人間社会を理解し適応していました。
はじめての来店は2020年秋頃。先住犬の黒ラブMIX15歳のミュウちゃんと一緒でした
その子の名前は、なつめちゃん。コーギーと甲斐犬などが混ざってそうなMIX、推定２歳でした。
年が明けた2021年、保護犬パーティを開催。
その時、なつめちゃんの生い立ちを知ることに。
2019.3.8 野犬として兄弟姉妹らしき犬たちとセンターに収容される
2019.6.11 センターで犬パルボウイルス感染症が発生
2019.6.20 兄弟姉妹3頭を含む30頭、睡眠薬入り餌で殺処分された。
なつめちゃんは、毒入りの餌を食べずに生き残った
2019.7.17 センターからなつめちゃんが引き出され、動物愛護団体のシェルターへ
2019.11.10 シェルターで人慣れせずドッグトレーナーの元でトレーニング開始
2019.12.7 里親会デビュー
2020.2.2 正式譲渡決定！
犬パルボウイルス感染症とは？
犬の糞便の中に排泄されるウイルスで、集団飼育施設で集団発生するケースも。症状は、衰弱、嘔吐、下痢などを引き起こし、幼犬の場合は重篤になったり死に至ることも。現在は、混合ワクチンで予防できるが、抗体ができるまでに何度も接種する必要がある場合も。
毒入りの餌を食べずに生き残るという奇跡を起こしたなつめちゃんの人間社会デビュー。
最初の5日はクレートから凄い勢いで飛び出すので、家の中でもリードをつけたまま。
徐々に慣らしたお留守番では、必ず敷物をビリビリにするあり様。そのため、クレートでのお留守番は断念。
以来、先住犬ミュウちゃんと同じ待遇に。そうしているうちに野犬っぽさが抜けていったそうです。
カフェではいつも同じテーブルの下に伏せて、尻尾をくるんとテーブルの脚に巻きつけていました。
そこがなつめちゃんの特等席。
写真はなかなか撮らせてくれませんでしたが、毎回ママが頼んでくれるドッグメニューを出すうちに
徐々に近づいてきてくれ、ドッグカフェ＝美味しいものにありつけるところと、認識。
お散歩に出た時、カフェ方面へ向かうと「こっちこっち！」と尻尾フリフリルンルン
ドアの前で「わお〜ん！なっちゃんだよ〜！来たよ〜！！」と嬉しそうに来店してくれるように。
看板犬が１ヶ月かけて食べる鹿の肩甲骨をミュウちゃんと二人で15分でバリバリと食べきったり、
出されたドッグメニューをわずか10秒程で食べきったりと推定２歳らしい、元気ハツラツな女の子でした。
2021年8月8日
この日が最後のカフェになるとは誰も予測がつきませんでした。
この日、少し元気がないなつめちゃん。いつもの席に着くとじっと動きません。
大好きな豆乳アイスを出されると、少しだけぺろっ。秒殺で食べる普段とは明らかに違う様子でしたが
最後まで残さず食べ切りました。
帰り際、「なっちゃん、帰るよ〜」とママに言われてもなかなか立ち上がらないなつめちゃん。
「夏バテかな？ それとも３歳児の反抗期かな？」そんなことを話しながら、カフェは夏休みに入りました。
その間になつめちゃんに異変が起こっていました。
2021年8月11日
お散歩で左側への少しのふらつき、右眼のしょぼつきに気づきました。ご飯は完⾷するもののスピードが⼤きく落ちました。夜には物にぶつかるように。
2021年8月12日
右⽬が⾒えていないことを疑い、⼣⽅かかりつけ医を受診。⾎液検査では炎症もなく、特に異常なし。緑内障の疑いで、翌朝、眼科専⾨獣医病院へ。
2021年8月13日
眼圧は正常で緑内障ではないが右眼は瞳孔が開き、眼瞼下垂 、左眼も視覚低下、3時間預けての詳細検査後、ママが迎えに行った時、なつめちゃんはママを認識できていない状態に。次は脳か神経系の病気の疑いで再び専門医へ予約。最速の予約は5日後でした。
2021年8月14日
なつめちゃんをシェルターからトレーニングしたトレーナーが同行しサードオピニオンへ。
到着した時点で新たに上下に眼振、ブドウ糖注射ですぐに⽌まりましたが
「脳は早い処置が全てなのに処置がないなんてありえない、
今⽇、明⽇が⼭…
脳外科予約の19⽇まではとてもじゃないけど持たないよ」
と、告げられたのです。
その後、無理な移動を控えるためトレーナーの家に身を寄せ、なつめちゃんは通院することに。この頃、先住犬のミュウちゃんも一進一退の状態で、食欲がなく目を離せない時期でした。
「ママはミュウのそばを離れないで。⼤切にして」
面会に行くと、意識混濁の中、⼀度だけ⼀瞬起き上がってママに向かって座り、1回尻尾を振ってくれたこと。それは、５⽇ぶりにママに⾒せてくれた「ちゃんとわかってるよ」のサインでした。
2021年8月19日
なつめちゃんは、動物病院の酸素室でひとり、ひっそりと息を引き取ってました。おそらく、脳炎、もしくは脳梗塞だったのではないか。断続的に脳の中で複合的な何かが最後の1週間におきていたようでした。でも、はっきりとした死因はわかりません。
野犬だったから、人間に殴られたことがあったかもしれない
野犬だったから、水を飲まなくて血栓ができやすかったのか
野犬だったから、成長期の栄養が十分じゃなかったからなのか
なつめちゃんがいなくなってしまい、ママはたくさん自分を責めていました。「なつめは、産まれてきた事を精一杯楽しんで、一杯愛されて、ありがとうを残して去った」と、トレーナー。「最期は苦しんでないよ、本当に賢い健気ないい子だから自分から身を引いたんじゃないかと思う」と獣医師。最期は保護してくれた団体スタッフに見守られながら旅立っていきました。
なつめちゃんが亡くなってちょうど初七日を迎えた頃、カフェで不思議なことが起こりました。コーヒーマシーンのコンセントが、なぜか、ブカブカになったようにボトリと抜け落ちたんです。挿してもまた落ち、挿してもまた落ち…。どうやら、その日は、家族や知り合いの家を回って電気を消したり、ブレーカーを落としたり、カフェにもいたずらしに遊びに来てくれたみたいでした。
それから、先住犬のミュウちゃんは徐々に元気を取り戻しました。日に日に、眼差しがなつめちゃんに似てきています。食が細くなり痩せてきたお尻が、なつめちゃんのプリッとしたお尻のように丸みを取り戻しました。後ろ姿はまるで、なつめちゃん。
ママとミュウちゃんが穏やかに暮らせるようにと、これからも、ふたりの側にずっとずっと寄り添ってくれるからね。
取材：ぐらんわん！編集部 飼い主さまへの取材を元に記事にしています。（2022年1月19日掲載）
