椎間板が変性したり、神経症状を引き起こす
椎間板ヘルニアにみられる症状
①痛みがある、元気がない
②四肢のふらつき
③排便・排尿ができない
症状…痛みによる元気・食欲なし・四肢の麻痺など
原因…犬種(遺伝)、外傷、急な運動
検査法…神経学的検査
治療の問題点…治療をしても急速に進行し死に至ることもある
治療費…CT検査と手術を行うことになると費用は高額になることも
椎間板ヘルニアは背骨と背骨にある椎間板が変性したり、外部からの強い圧迫により椎間板の物質が背骨の間から飛び出し脊髄を傷害し神経症状を引き起こす疾患です。ダックスフンド、ウェルシュコーギー、ビーグルなどによく見られますが、飼育頭数が多いことや犬種的体型により、現在ダックスフントで非常に多く見られています。
症状はヘルニアが生じる場所により様々ですが、程度の軽い場合では痛みや元気がない程度のものから、程度の重い場合では四肢のふらつきや麻痺が生じたり、排便や排尿ができなくなり生活に支障をきたすこともあります。一部の犬では脊髄の変性が急速に進行し広がり、呼吸不全、・心不全などが生じ急死してしまう場合もあります。
診断は症状、身体検査、神経学的検査、レントゲン検査、CT検査などにより行いますが、多くの病院ではCT検査ができないことが多いので、神経学的検査やレントゲン検査により診断するか2次診療施設へ紹介することになります。
治療は症状やヘルニアの程度の軽いものでは消炎・鎮痛剤の投与と運動の制限を行います。原因の除去ができていないため再発の恐れはありますが、多くの症例で症状が緩和・消失します。症状や程度の重いものでは外科手術により、椎間板物質を取り除きます。このとき症状が出てから手術するまでの時間が短ければ短いほど脊髄の損傷が少なくなるため、術後の病状回復の可能性が高くなります。治療により症状が回復しても、神経の病気は筋肉が委縮することが多いため急激な運動は控え、リハビリを行いながら筋肉を回復させることも重要になってきます。この際、肥満傾向にある犬ではリハビリ中の回復が遅くなるので太り過ぎには注意しましょう。
歩けないことや、排尿・排便が上手くできないことはかなり生活の質を下げることになり飼い主さんや犬に相当な負担をかけますので、症状がでたら早急に診察を受けることを勧めます。一時期のようなM・ダックスフントブームは落ち着きましたが、シニア世代に突入するM・ダックスフントはここ数年でピークを迎えるようですので、ダックスを飼われている飼い主さんは特に注意が必要かもしれません。
監修:福田卓也先生/獣医師
症状や治療法は一例です。病気を診断するものではありません。自己診断せず、かかりつけの獣医師に相談しましょう。【vol.9(2011年1月)掲載】※情報は掲載当時のものです。