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レジェンドッグ 〜伝説の犬〜 

 

 

小梅26歳

小梅ちゃん/MIX/26歳

トップバッターは、26歳雑種の小梅ちゃん。

一時、離ればなれになった時期がありましたが強い二人の絆で再会を果たしました。

 

 

 出会いはボクが16歳の冬。水戸の親戚宅で産まれた雑種のワンコは、ポーチに入ってやってきた。母は柴犬の小春。偕楽園の梅にちなんで小梅と命名。当時ボクは都内で家族4人暮らし、先住インコのピータもいた。小桜インコの17歳はご長寿さんだそうで、小梅の長生きはピータ譲りかもしれない。芸達者な犬に憧れていたボクは、賢い小梅にたくさんの芸を覚えさせた。でも今思えば、その頃の小梅はどこかつまらなそうな表情をしていた。

 小梅が11歳の頃、病魔がボクを襲った。大手術を受けたが長期リハビリが必要になった。意を決し転地療養の為、北海道へ。ボクは小梅に問いかけた。「一緒に来るかい?」いつもの散歩とは違うと察したのか、小梅はボクについて来た。実家を離れ2人の旅が始まった。当時の小梅は見知らぬ場所でなかなかトイレができない程シャイで、急な環境変化に驚かないよう、慣れてから次の場所へ、また慣れたら次へと時間をかけて移動した。

 北海道に移住した最初の年は、初めて見る海で泳いだり、川湯温泉に入ったり、ふっかふかの雪に埋もれたり、小梅には大冒険だったと思う。
 ところが札幌に越した翌年に事件は起きた。身体の具合が悪く仕事も上手くいかない生活が続いていたボクは、時にイライラして些細なことで怒鳴ったり小梅を悲しませたりするようになっていった。
 いつものように公園で散歩をしていた時のことだった。ノーリードにしていた馬鹿なボクは、うわの空で互いに見えないくらい離れてしまった。挙げ句の果てに、ボクは呼んでも来ない小梅に酷い怒り方をしてしまった。小梅は背を向けて走りだし、姿を消してしまった。我に返り、詫びたい一心で必死に捜し回ったが見つからなかった。小梅を悲しませて迷子にしてしまった。首輪に連絡先を記していたけれど、連絡が来ることはなかった。小梅14歳の春のことだった。

 

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 毎日河川敷を捜索して動物病院には写真を貼ってもらい、街中を歩いて聞き込みを続けた。動物管理センター(以下、センター)のホームページをチェックし、似た仔がいれば会いに行ったが見つからなかった。
 それ以来、自分を追い込み必死で働いた。どんな仕事も引き受け中古の軽貨物車を購入し、真冬も捜す為に態勢を整えた。仕事で大ケガをしたのはそんな時だった。出稼ぎの最中ほぼ寝たきりになったボクに残された希望は、センターの迷子犬情報を見ることだけだった。

 失踪から23ヶ月経ったある日、収容犬ページに小梅の画像がアップされた。〝小梅!〟見た瞬間跳ね上がり、涙が溢れた。すぐに連絡し、迎えに行った。もし介護が必要な状態になっていたとしても、また一緒に暮らしたかった。
 約2年ぶりの再会。「小梅!」小梅は大喜びでボクを受け入れてくれた。少し白髪混じりだった被毛は、北海道の雪や寒さに適応して黒く美しく野性的になっていた。憶病だった小梅は、凛としてたくましく、自信に満ちあふれた姿に成長していた。それぞれの弱さを乗り越え、成長したからこそ再会できたのかもしれない。初めて見るボクの車に颯爽と乗り込んだ小梅は、帰り道ずっと真っすぐな瞳でボクを見つめていた。
 センターの獣医師さんは「この子は迷子の間、誰かに飼われていた様子がある。とても賢くて良い子だから、もし飼い主が現れなくても引き取りたいという人が何人もいたよ。」と言ってくれた。そしてこうも言った。「この子はあと10年くらい生きそうだね。」
16歳の小梅からのサプライズだった。
 それからは関東の街で2人暮らし。後遺障害が残るボクのリハビリに小梅は毎日つき合ってくれた。その頃は杖をついて少し歩くのがやっと。動かしづらい方の腕にリードを巻き付け、小梅が引っ張ってくれた。ボクらの関係は、小梅がリードする側で、ボクはされる側になっていた。

 
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 あれから10年、涙が出るほど幸せな日々。時にはクルマで旅行したり、手芸を習い首輪やリード、お散歩バッグを作ったりもした。ヘンプの麻ひもで編んだ長寿御守りを揃って身につけ、いつも一緒だった。
 20歳を迎えた時、ギネス最高齢の犬が29歳と知った。小梅なら30歳だって目指せるかもしれないと思っていた。

 小梅が25歳になった頃、良性腫瘍が大腸を圧迫した。かかりつけ医に高齢すぎて手術できないと言われたが、出血が始まり結果的に緊急オペ。26歳になると僧帽弁閉鎖不全症や前庭疾患、巨大食道症にかかりカテーテルで流動食を入れることに。力が入らなくなった小梅を乳飲み子のように抱きしめた。「仕事と自分の障碍に加え小梅の介護を最優先に」一瞬だが不安が脳裏をよぎった。それを推し量ったかのように小梅は間もなく旅立ってしまった。
 深い悲しみを拭えず、しばらくは途方にくれた。部屋にいても虚ろに宙を見つめてぼーっとする日々。でも、小梅の生き様に恥じないよう生きなくちゃ、そんな想いが募り始めた。ボクは動物愛護団体で働くことを決めた。複雑な思いもたくさんしたが、寂しさは少しずつ和らいでいった。

 愛犬には長生きして欲しいと誰もが願う。ボクは小梅に長生きして欲しくて、穏やかな時間とワクワクする環境作りに努めた。心地良い音楽に食事、そして旅。新しいものに触れるたび小梅は喜んだ。でもやっぱり一番の長生きの秘訣は 〝想いやり〟だとボクは思う。お互いを想う気持ちが絆になって、ボクらをしっかりと繋いでいた。かつてその絆を離してしまったボクだからこそ、心からそう想う。
 ボクらは旅するように人生を駆け抜けた。愛するワンコとインコは大切なことを教えてくれた。今度はボクが動物達の為に頑張ろうと想う。諦めずに求め続けて再会できたあの日のように。虹の橋で見守ってくれている小梅とピータに、またいつか逢えると信じて。


 

年表

 

(2018.1 VOL.38掲載)
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