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いしいますみの老犬学入門③
ペットロスって何だろう?

 いまや犬の寿命が飛躍的に伸びて、15歳ぐらいまで生きてくれる子は多くいます。20年以上前なら、10年も生きていると「長生きね」といわれたものです。長生きしてくれるということは、それだけたくさんの思い出を共有するというものです。でも、犬は、人間のように70歳以上、生きてくれるわけではないので、別れはやってくるのです。

 そのとき、飼い主は「ペットロス」というものに陥ります。ペットロスという言葉は、だいぶん普及していますが、ここで説明しておきます。それは愛するペットが、病気や事故などでこの世を旅だったときに、飼い主に起こる喪失感や悲しみを指します。飼い主によって強い弱いはありますが、このとき、独特の感情を味わいます。こんなに不安で、何を見ても悲しいというような気持ちを持ったことがないので、自分の気持ちの変化に驚き、どうすればいいのか悩みます。

 

 恥ずかしながら実体験を吐露しますと、獣医として動物の生き死を目の前にして、飼い主にわかったようなことを話していました。ところが、飼い主の気持ちを理解していなかったことをユキチの死を通してはじめて気がついたのです。
 学生時代から飼っていた愛犬・ユキチを亡くしたとき、数カ月、何かにつけて泣いて暮らしていました。ユキチは柴犬系ミックスだったのでそれに似た犬(たとえば柴犬など)がやってくると、診察中は、冷静に装っているのですが終わると奥に入って涙したものです。亡くなった直後は、何をしても心が晴れず、私の傍らで笑っている人、美味しいそうに食事を取っている人がいれば、それだけで許せませんでした。私にとってこんな非常時に、何故、笑えるの?と思って憤りを覚えたものです。そのときは、よくわからかったけれど、時間が流れるとわかったことは、それだけユキチを愛していたということのなのです。動物を愛するという感情を持てる人ほど、ペットロスに陥るのです。

 

 考えてみてください。人間の子どもに例えると、生まれた子どもが中学校を卒業するぐらいまで、一緒にいた家族の一員がいなくなって、どうも思わないことの方が不自然ですよね。だから、知り会いでペットが亡くなって、悲しみに打ちひしがれていても、温かく見守ってあげてください。こんな感情がいつまでも続くのか、不安で仕方がないかもしれません。でも、安心してください。人によって長い短いはあるかもしれませんが、そのうち薄れていくのです。無くなるということはありませんが、悲しみがやがていい思い出といえる時がやってきます。

 

 それには、段階があります。まずは、悲しみの第一段階(感情麻痺の時期)。これは、あまりの悲しみに、いま、目の前に起こっていることを否定して、その感情を受け入れる器を用意している時期です。第二段階(思慮と検索の時期)。死という現実を受け入れるとする時期です。この時期で、やっと亡くなったことを受け入れます。第三段階(混乱と絶望の時期)やっと悲しみが身体の中に取り入れて、なんに対しても苛立ち怒りが起こってくる時期です。第四段階(再起の時期)。もとの人格に戻って、現実を受け入れられる時期です。

 この段階を経て、やっと心が平穏になっていくのです。この時期は人それぞれなので、いつぐらいということは、いえません。ただ、自分自身の中で心の変化が起こっていることに気付けば、それは段階が進んでいるということです。ただ、心が全く動かず、悲しみに暮れている日々が長い人は、一度、心療内科などを受けてみるのもいいかもしれません。ペットロスについては「ペットロス処方箋」(コスモヒルズ社)という私の本に書いているので、よろしれば、読んでみてください。

 

 次回は、自分の傍らにペットロスの人がいれば、どう対処すればいいか?の話を書きます。


 

(vol.12 2011年7月号に掲載)

 

 

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